私たち、名古屋大学のX線天文グループも協力して開発を進めて来ました、X線天文衛星ASTRO-E IIは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究本部(ISAS)の、内之浦宇宙空間観測所から、M-V-6号機により、2005年7月10日午後0時30分に無事、打ち上げられました。打ち上げ直後の軌道は、近地点247km、遠地点560km、傾斜角31.4度であり、現在、近地点を上げる作業、姿勢制御の確立の作業を行っています。衛星の名前は「すざく(Suzaku)」となりました。
X線は宇宙の中でも、高温な天体や、高エネルギーの現象を起こしている領域から強く放射されます。この衛星は、日本のX線天文衛星として5機目にあたり、X線望遠鏡(名大担当)と3種類のX線検出器を搭載して、広い観測帯域と高い分解能の分光能力を持ちます。特に、X線分光器はこれまでに比べ、一桁以上、分光の分解能が高く、宇宙の高温ガスの輝線を詳しく調べることができます。ドップラー効果を用いると、銀河団ガスやブラックホール近傍のガスの運動(ダイナミックス)を精度高く実測でき、銀河団の合体などの宇宙の構造形成や、ブラックホール近傍のエネルギー解放、時空構造の解明を目指します。
この衛星は、2000年に軌道投入できなかったASTRO-Eの再挑戦機であり、日本国内の大学、諸機関、米国航空宇宙局(NASA)などの協力で開発が進められました。その観測は国内外の研究者からの提案に基づいて行われ、現在稼働中の米国、欧州の二つの大型X線天文台と共に、世界のX線天文学を強く押し進めることになると期待されます。
この衛星プロジェクト推進にご協力頂きました、国内外の大学、研究機関、開発に携わった企業の皆様に、心より感謝したいと思います。
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